『追憶』


 「空に返して…」


 真菜が死んだのは一年前、突然の交通事故で真菜は、あっという間に僕の目の前からいなくなってしまった。
 事故現場には、画面が割れて、ひしゃげた彼女の携帯電話が落ちていた。
「これ、私が作ったの。付けてね。」
少し恥ずかしそうに、僕にくれたストラップが、そのひしゃげた携帯に付いていた。それを見た瞬間に無性に悲しくて、止めどなく涙が溢れてきた。
 車のボンネットは潰れ、僕の心みたいな、フロントガラスが、そこら辺中にちらばっていたのを覚えている。
 喧嘩ばかりして、いつも無茶をする僕を、いつも心配してくれた、とても大切な人だった。それなのに、僕は彼女に何もしてあげられないまま…。
 悲しみと、寂しさと、真菜と過ごした思い出がよみがえり、僕は悲嘆に暮れていた。そして、いつしか「真菜を返してください」と神に祈るようになって
いた。そんなことをしても、彼女は戻っては来ないことと知りながら。


  一年が過ぎた。


 ある日、真菜とよく来た公園を歩いていると、女性が倒れていた。駆け寄ってみると、目の前には、記憶のままの姿の彼女がいた。
「真菜…真菜!」
信じられないが、一年前に死んだ真菜だった。眠る彼女を抱きしめた。
そして、震える指でほほを撫でる。
「ああ…天におられる我が父よ!ありがとうございます。」
神を賛美して、僕は真菜を家に連れ帰った。
 祈りが通じたのだと、喜んだのも、束の間、目覚めた彼女は、以前の、優しい笑顔もなく、ただ宙を見つめたまま、表情を変えない。そして、口にする言葉は「空に返して…」だけだった。


  彼女には心が無かった。

 何日たっても、様子は変わることなく、たまに、上を指さすだけだった。
一度死んだはずの人間が戻ってくるなど、誰も信じる者はいないだろうし、ヘタに、人に診せれば、どんな風にされるかわからない。また、彼女を失うのは絶対に嫌だった。今の僕に出来ることは、ごくわずかだった。
 そして、僕は再び神に祈りを捧げた。
「彼女の心を戻して下さい…」
 しかし、祈りは通じることはなく、真菜に心が戻ることはなかった。
そして、僕は最後の願いを神に捧げた。
「彼女を安らかに眠らせて下さい…」
 彼女は空を指さしながら「空に返して…」というばかり。
まるで、彼女は本当に帰るべき場所を知っているかのように。
 そして、僕は…

 僕は

 

【終わり】

MALICE MIZERの「Syunikiss〜二度目の哀悼〜」の曲を自分なりにショート ショートにしてみました。

僕=Gacktさん という設定で書いています。

彼女の真菜さんには、モデルはいませんが、名前をマリスのMANA様から拝借。

この後、彼はどうしたんでしょうね?

それは、みなさんが自由に考えてくださいね〜。

では!

(C) 2006 HALO BIRD AKIHITO